2020年11月14日(土)、松本市の松南地区公民館の調理室で『さばける塾in長野県』が松本市では初めての開催されました。多くの人に魚をさばけるようになってもらい、さばくことの楽しさ、魚のおいしさ、海への感謝などを広めるイベントが「さばける塾」です。全国各地で開催されており、長野県では今回で4回目の開催です。
今年は新型コロナウイルス感染症対策として、会場の定員の半分にしたり、消毒やマスク着用の徹底など十分な対策を行い実施しました。参加したのは、長野県内の6組12人の親子のみなさんです。今年のテーマ食材は「サンマ」。長野県民も大好きな秋の味覚です。
さばける塾は、単なる料理教室ではありません。日本人の海離れ、魚離れが進む中、海洋環境保全・海洋文化継承の社会的な機運醸成を目的としています。今海で起きている変化や問題についての学びからイベントはスタート。今回は、長野県内のスーパーマーケットから学べるサンマの不漁問題をテーマに講義。進行は、長野県最大の鮮魚卸売業者「マルイチ産商」と業務提携を結び、「浜このみのお魚レシピ」と称して、海なし県信州の県民に対し、魚をおいしく食べるレシピを数多く提案し、食目線で“魚ファン”を増やす活動を続けている浜このみさんです。また、アシスタントを務めるのは、海と日本プロジェクト推進リーダーの長野放送・汾陽美樹アナウンサーです。
講義は、サンマの値段が今年は圧倒的に高いという話からスタートし、サンマの不漁問題についてです。確かに、ニュースではサンマの不漁の報道が目立ちます。どうしてサンマが獲れないのかについての勉強です。
日本のサンマの漁獲量は、年々減り続け、近年のピークは2008年の約35万トンですが、昨年は約4万トンに減り、過去最低で今年はさらに減る見通しです。商品が少なければ、価格は上がるので、スーパーでは、一時、1匹400円近い価格で並ぶケースもありました。庶民の味のサンマがなかなか手の届かない価格になると、食卓から遠ざかってしまいかねません。
サンマの不漁の原因は主に2つあると言われています。
一つは、地球温暖化に伴う海水温の上昇。冷たい水を好むサンマが日本近海に来なくなったと言われています。あるデータでは、日本近郊の海が、100年前と比べ1.0℃近く上がっているという調査結果もあります。今年は水温が一段と高く、漁獲量の減少に拍車をかけています。浜このみさんは「サンマは秋の味覚と言われてるが、今後は冬の味覚に変わるかもしれない」と指摘。
サンマが獲れなくなった理由のもうひとつは、乱獲の影響と言われています。周辺地域の台湾や中国では、健康志向の高まりから魚の食事が人気で、サンマを食べる場面が多くなっています。そのため、日本近海に入ってくる前の公海で、大型船による「先取り」を行っていると見られています。
浜このみさんは、「スーパーマーケットでサンマの値段を気にしながらチェックしてみて下さい。旬の時期にサンマが以上に高い値段だったら、日本の海の周りで環境や乱獲などの変化が起きていると感じてください」と伝えました。こうした海の変化に参加者も真剣な表情で講義を聞いていました。講義の後はいよいよ調理スタートです。ほとんどのこどもは生の魚をさばくのが初めてです。まずは、浜先生がお手本をみせます。
「ぬるぬるする」「ぶにゅぶにゅする」。魚を触ったのも初めてという小学生もいました。
一度みたお手本通りに器用な手さばきで魚をおろす子供たち。飲み込み能力が高い!最初は、包丁でさばくことを怖がっていた子も時間が経つにつれ集中してのめり込んでいる様子。
「こどもがこんなに上手に魚をさばけてびっくりした。こどもの成長を感じました」と参加してくれたお父さん。子どもたちと同じくさばく体験にハマった様子のお父さん、お母さんもいました。
三枚おろしのコツについて、「骨のギリギリの部分に包丁を入れて、”骨に当たる音”が聞こえるくらいが正解」と、浜先生。さばいたサンマで、浜先生オススメのおしゃれでおいしいランチを作ります。
サンマのペペロンチーノ
サンマとレタスのポテチサラダ
季節のフルーツのシュワシュワゼリー
3つのメニューを作りワンプレートに盛り付けて、みんなで「いただきます!」
子どもたちからは「おいしい!」の笑顔があふれます。「自分でさばいた魚だからさらにおいしい」「サンマとスパゲッティが合う」という声が聞かれました。子どもと一緒に参加した母親は「明日さっそくサンマをさばいて夕食のメニューにしたい」と言っていました。
自分で魚をさばいてみることをきっかけに、海と親しむ「さばける塾」。受講した親子には、浜先生よりさばけるマスターの認定証が贈られました!
長野県から新たに12人のさばけるマスターが誕生しました。