塩尻市に伝わる民話「善知鳥峠」がアニメーション作品として制作され、上映会が開催されました。一般社団法人日本昔ばなし協会と塩尻市海ノ民話のまち実行委員会が主催し、会場となった塩尻市の両小野中学校には、塩尻市百瀬敬市長、アニメ監督の沼田心之介監督、生徒65名など約100名が参加しました。
塩尻市に伝わる海ノ民話「善知鳥峠」のアニメを鑑賞
物語は、青森県に暮らす善知鳥が、漁師にひな鳥を奪われる所から始まります。善知鳥というのは、北の海に暮らす海鳥の一種。捕まえたひな鳥を献上しようと都に向かう漁師を追って、親鳥も長い旅をしてきましたが、塩尻の冬の峠で力尽き、この地に葬られたことから、この峠は、善知鳥峠と呼ばれることになったといいます。
アニメを見て、生徒や参加された方々からは「善知鳥峠のことが詳しくまとめられていたからわかりやすかったし、善知鳥峠の名前の由来もわかって良かった」「少し悲しさや切なさがあったけど、アニメーションの中から人と動物との間にも共通点があるということが伝わってきました」「このアニメーションを通して、地域の魅力をもっと伝えていきたいと思いました」「アニメは素敵な絵と内容でした。また観たい内容と時間的にも良かったです」「大変わかりやすいアニメです。内容も良く塩尻のPRにもあると思います」といった感想が聞かれました。
沿岸部と内陸を繋ぐ「塩の道」
上映会に合わせて郷土の歴史に詳しい講師となり、学習会も行われました。
民話「善知鳥峠」の舞台となるのは、その名のとおり塩尻市にある「善知鳥峠」の分水嶺です。海から遠く離れた塩尻市に、日本海と太平洋の両方に繋がる川を分けている場所があります。海のない長野県ですが、海にまつわる民話があり、また海にまつわる漢字が付いた地名も多くあります。そのうちの一つが塩尻市です。塩尻市は沿岸部で作られた塩の流通と関係があり、交易ルートがあったとされています。その交易ルートを「塩の道」と言います。暮らしに欠かせない塩は海のある地域からの移入に頼っており、日本海側から運ばれる塩を「北塩」、太平洋側から運ばれる塩を「南塩」と呼んでいました。塩尻市は長野県の中央に位置し、日本海からも太平洋からも同じくらい遠く、どちらからも運ばれる塩の最終地となり、塩の「尻」にあたるということが「塩尻」の由来でもあるそうです。塩尻市には川の始まる場所であると同時に、沿岸部で作られた塩の最終地点ということを学びました。
アニメの活用方法を考える
また、アニメを観た生徒たちに、今後このアニメをどのように活用していくことができるのかを考えてもらいました。まず、海ノ民話事務局の柴田プロデューサーに今までの活用例を教えてもらい、その後グループに分かれて話し合い、出た意見を発表しました。
<生徒から出たアイディア>
・地元の酒造とコラボレーションしたお酒のラベル作成
・公共施設でアニメを流す
・ハンカチ、缶バッチ、ファイル、ポケットティッシュ、タオルなどグッズの作成
・パズルやぬいぐるみを作って、能登半島地震で被災した子供たちに寄付する
・コンビニと商品のコラボ、地域の飲食店とコラボ
・塩尻市の母子手帳にイラストを使う
・地元の映画館で映画の本編前に上映
・アニメに英訳をつけて駅で流す 等々
塩尻市の百瀬市長は、「形にするための支援をしていきたい。」と海の民話のアニメの活用を街全体として取り組んでいく方針が語られました。