長野県の天竜川には、かつてウナギが豊富に生息していました。しかし、今ではその姿を見ることが難しくなっています。なぜウナギがいなくなってしまったのでしょうか?天竜川の生物に詳しい天竜川総合学習館かわらんべの久保田憲昭さんが講義と川での現地調査で教えてくれました。
「かつて天竜川では、ウナギ漁が盛んでで、1930年代の昭和初期には、年間38万トンものウナギが獲れていたんです。これは今では想像もできない量です」と久保田憲昭さんは語ります。
天竜川では、「やな漁」という伝統的な漁法でウナギを捕獲していました。竹で作った仕掛けを使い、川を上ってくるウナギを効率的に捕まえていたのです。1時間で940kgも獲れた際は「そうめんくだり」と称された記録があります。やな漁は、つい50年前まで長野県でも見られる風景だったそうです。しかし、昭和40年代になると急激に減少し、ウナギ漁は成り立たなくなりました。どうして減ってしまったのか?の質問に対し、児童は「水質が悪くなった」「温度が上がって住みにくくなった」などの意見がありました。天竜川の水質の悪化がウナギの減少の理由かどうかを調べるため、調査隊は、天竜川の支流の久米川へ。
天竜川は、長野県の諏訪湖を源とし、静岡県を通って太平洋へと流れる日本一長い川です。全長約213キロメートルにわたるこの川には、実に多様な生き物が生息しています。まずは、川の中をのぞいてみました。「小さな生き物がたくさんいる。」と調査隊の一人が興奮気味に話します。子どもたちの目は、普段気づかない川の世界に釘付けになっています。この日は、気温35度以上の猛暑日。思い切って腰まで川の水につかると「冷たくて気持ちいい」と子供たち。網で、エビ、ヘビトンボ、ヨシノボリなど多くの生物をつかまえていきます。
川の調査では、水質も問題なく、ウナギのエサとなるエビもいて、隠れ家となる石や水草もあり、生息するには、問題のない場所だとわかりました。しかし、ウナギを発見することはできませんでした。なぜ姿を消してしまったのでしょうか?その大きな理由の一つが、ダムの建設です。「ダムができたことで、川から上がってくるウナギが諏訪湖近くまでたどり着けなくなってしまいました」と久保田さんは説明します。ダムは災害防止や水の確保、発電など人間にとって重要な役割を果たしています。しかし、ウナギは海で生まれ、川を上って成長します。そして再び海に戻って産卵するという、壮大な旅をする魚です。ウナギにとってダムは大きな障害となってしまったのです。
川のウナギがいなくなった理由を理解したメンバーたち。しかし、現在、ニホンウナギは絶滅危惧種に指定されるほど数が減少しています。これは川だけでなく海でも大きな変化が起きているかもしれない。そんな疑問を持ってメンバーたちは静岡県浜松市に向かい、調査を続けていきます。