海に囲まれた日本列島。しかし、近年「海離れ」が進んでいるといわれています。そんな中、公益財団法人日本財団が実施した「海と日本人」に関する意識調査で、驚きの結果が明らかになりました。全体的に海への関心が低下する中、若い世代の海への興味は依然として高く、さらに内陸県である長野県の海への愛着度が大幅に上昇したのです。この意外な結果の背景には何があるのでしょうか。
調査結果によると、「海が好きだ」と答えた人の割合は約4割にとどまり、2022年と比べて8%も減少しています。さらに2019年と比較すると、実に13%もの減少が見られました。一方で、「海は大切な存在だ」と答えた人は約7割に上ります。
この「海離れ」の背景には、現代人の時間の使い方が大きく関係しているようです。調査では、「なるべく時間を効率的に使いたい」と考える人が7割にも上ることが分かりました。その結果、余暇の過ごし方として「海に行く」という選択肢は22位と低迷し、わずか7%の人しか選んでいません。
「海のイメージが『海水浴』や『砂浜』に偏っていることも、海離れの一因かもしれません」と日本財団は分析しています。時間や手間のかかるイメージが強いため、効率を重視する現代人にとって、海が余暇の選択肢から外れてしまっているのかもしれません。
しかし、この「海離れ」の傾向に反して、若い世代の海への関心は依然として高いことが明らかになりました。小学生の75%は「海に行きたい」と答えていて、これは全世代の59%と比べても高い数字です。
この結果を受けて、日本財団常務理事の海野光行氏は「小学生の75%が海に行きたがっているが、子どもの体験というのは社会経済的状況に影響を受けるものである。体験格差をうめるべく臨海学校のプログラムなどをはじめとした公立学校や地域との連携を促進する活動により力を入れていきたい」とコメントしています。
調査結果で特に注目すべきは、高校生の海に対する姿勢です。全世代と比較して、高校生は「海が好きだ」「海に行きたい」という回答が多く、実際に「1日以上海へ行った」経験も豊富でした。さらに興味深いのは、高校生が「様々な媒体から情報を入手」し、「SNS等で自分の行動や意見を発信」している点です。この積極的な学習と発信の姿勢が、海への関心の高さにつながっていると考えられます。
専門家は「高校生のこうした前向きな態度は、海洋環境保護や持続可能な海の利用について、新たな視点や解決策をもたらす可能性がある」と指摘します。また、「彼らの積極性を活かし、海に関する活動の協働パートナーとして巻き込むことで、社会全体の海への意識向上につながるかもしれない」とも述べています。
そして、今回の調査で最も注目すべき結果が、長野県の海への愛着度の大幅な上昇です。「海と日本人 愛着体験スコア」のランキングで、長野県は前回2022年の調査では47都道府県中45位でした。しかし、2024年の調査では32位まで大きく順位を上げたのです。
体験スコアでも同様の傾向が見られ、2022年の43位から2024年は30位まで上昇しました。専門家は、「環境問題への意識の高まりが、海への関心を促進している可能性もある」と分析しています。
海に囲まれた日本だからこそ、海との関わりを大切にしていく必要があります。若い世代の高い関心や、長野県のような内陸県での海への愛着度の上昇は、今後の日本人と海との関係性を考える上で、大きなヒントとなるかもしれません。
参考資料:日本財団「海と日本人」に関する意識調査 2024
https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/information/2024/20240711-102765.html