長野県飯田市で行われた「うしろむき弁天ものがたり」学習会。海のない地域で、子どもたちが海との繋がりを学ぶ貴重な機会となりました。アニメーションを通じて、地域の歴史と海の重要性を楽しく学んだ様子をお伝えします。
2025年2月18日、飯田市の下久堅児童クラブに集まった約20名の小学生たち。彼らを待っていたのは、海と山をつなぐ不思議な物語「うしろむき弁天ものがたり」でした。
このアニメーションは、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として制作されたもの。海のない長野県の子どもたちに、どのように海との繋がりを伝えるのか。その答えは、地域に根付いた民話の中にありました。
「うしろむき弁天さまは、なぜ後ろを向いているの?」という素朴な疑問から始まる物語は、子どもたちの好奇心をくすぐります。アニメーションに登場する愛らしい河童のキャラクターに、子どもたちは思わず引き込まれていきました。
「うしろむき弁天ものがたり」は、飯田市に伝わる民話を基にしたアニメーションです。物語の舞台となるのは、天竜川のほとりにある弁天厳島神社。約380年前から続くこの神社は、本殿が川の中にある珍しい存在です。
アニメーションでは、弁天様が後ろを向いている理由や、天竜川と地域の人々との関わりが描かれています。舟の安全を祈る人々の思いや、川を通じて海とつながる飯田の歴史が、子どもたちにも分かりやすく表現されているのです。
「河童が出てきて可愛かった」という感想からも分かるように、親しみやすいキャラクターを通じて、子どもたちは地域の歴史と文化に触れることができました。このアニメーションは、地域の誇りを再発見する機会にもなっているのです。
学習会では、地元の講師が天竜川について詳しく解説しました。「なぜ天竜川という名前になったのか」という質問に、子どもたちは真剣な表情で耳を傾けます。
天竜川の歴史を紐解くと、そこには洪水の記録が刻まれていました。「天竜川の洪水が多くあったことを知って、怖いこともあったんだなと思った」という感想を漏らす子どもも。地域の歴史を知ることで、自然の力強さと共に生きてきた先人たちの知恵に、子どもたちは静かに感銘を受けたようです。
また、天竜川が太平洋へとつながっていることを学び、川を通じて海とつながっているという新しい視点を得ることができました。
「長野県に海はないから、海について知らないことが知れて良かった」。ある子どもの感想が、この学習会の意義を端的に表しています。
内陸部に住む子どもたちにとって、海は遠い存在かもしれません。しかし、天竜川は太平洋へとつながっています。川を通じて、私たちの生活は海と密接に結びついているのです。
学習会を通じて、子どもたちは海の環境問題にも関心を持ち始めました。「海のことをもっと知りたい」「川をきれいにすることが、海を守ることにつながるんだね」といった声が聞かれ、海への意識が芽生え始めています。
この学習会は、海のない地域だからこそ意味のある取り組みです。地域の歴史と文化を通じて、子どもたちに海との繋がりを感じてもらう。そんな新しい環境教育の形が、ここ飯田市から始まっているのです。