コスプレイヤーたちが、お気に入りのキャラクターに扮して海洋ごみ問題に挑む。そんな異色のイベントが2024年9月21日、東京・お台場で開催された。日本財団と環境省が主催する全国一斉清掃キャンペーン「秋の海ごみゼロウィーク2024」のキックオフを飾った本イベントは、環境保護とポップカルチャーが融合した新しい取り組みとして注目を集めている。
「コスプレde海ごみゼロ大作戦!!2024秋 at お台場」と銘打たれたこのイベントには、コスプレイヤーをはじめ、協力企業・団体、海上保安官、国土交通省の関係者など、約350名が参加した。開会式後、参加者たちはお台場周辺でごみ拾いを実施。その結果、45リットルのごみ袋37袋分のごみを回収するという成果を上げた。イベントの開会式では、日本財団常務理事の海野光行氏が「ジョジョの奇妙な冒険」の空条承太郎のコスプレで登場し、会場を沸かせた。海野氏は「海洋ごみを減らすためにまずは陸地のごみを回収する必要がある」と呼びかけ、環境保護の重要性を強調した。環境省環境大臣政務官の国定勇人氏も登壇し、「2040年には追加的なプラスチック汚染をゼロにする」という国際的な目標を紹介。世界規模で進む海洋プラスチック汚染防止の取り組みについて説明した。
本イベントが注目を集める理由の一つは、コスプレイヤーの参加だ。コスプレイヤーの中には、撮影ロケーションを大切にするため日頃から自主的にごみ拾いを行っている人も多い。また、SNSでの発信力が高いことから、環境保護活動の新たな担い手として期待されている。
一般社団法人世界コスプレ文化普及協会は、こうしたコスプレイヤーの特性に着目。環境意識とSNS発信力を活かした海洋ごみ削減活動を展開している。
「海ごみゼロウィーク」は、2019年から実施されている海洋ごみ削減に向けた全国一斉清掃活動だ。2024年度は春(5月30日〜6月9日)と秋(9月20日〜29日)の2回実施される。期間中、全国各地でごみ拾い活動を行う団体にオリジナルごみ袋が無料で提供され、清掃活動を後押しする。今回のキックオフイベントでは、日本国内6会場(熊本・香川・兵庫・京都・滋賀・北海道)に加え、海外からパラオとも中継を繋ぎ、国際的な広がりを見せた。
環境省の国定勇人氏は、「このままでは2050年に海の魚の量よりも海を漂うプラスチックごみの量の方が多くなる」という予測を紹介し、問題の深刻さを訴えた。海洋プラスチックごみの約8割は陸地由来とされており、陸上でのごみ対策が重要となっている。日本財団の海野光行氏は、「今問われているのが私たちがどう行動変容していくのか」と指摘。ごみ拾い活動を通じて、参加者一人一人が日常生活でのごみ削減や適切な処理の重要性に気づくことを期待している。
参加者からは「ごみを拾っていくと段々楽しくなってきた」「意外とごみが散らばっていることが分かった」といった声が聞かれ、活動を通じて環境意識が高まったことがうかがえる。
コスプレイヤーとの協働や、スポーツ要素・ゲーム性を加えたごみ拾い活動など、様々なアプローチで環境保護活動の裾野を広げる試みが全国で展開されつつある。こうした多様な取り組みが、持続可能な社会の実現に向けた大きなうねりとなることが期待される。
海洋ごみ問題の解決に向け、一人一人が「自分ごと」として行動を起こす。そんな社会の実現に向けた第一歩として、このユニークなイベントは大きな意義を持つと言えるだろう。