長野県岡谷市の小学生たちが、三重県鳥羽市へ海洋ごみ問題を学びに出かけました。海のない信州に住む子どもたちが、なぜ遠く離れた海の環境に関心を寄せるのでしょうか。岡谷こどもエコクラブの小学生による、驚きと発見に満ちた1日の旅を追いかけます。
三重県鳥羽市にある「海の博物館」。ここを訪れたのは、「岡谷こどもエコクラブ」の小学生です。彼らの目的は、川から海へ流れるごみの調査。三重県の海岸は、伊勢湾に注ぐ川から流れたごみが大量に漂着する場所として知られています。
海の博物館の平賀館長は、子どもたちに海と山のつながりについて語りかけました。「海のない信州でも、そばつゆの出汁につかう鰹節など、生活に欠かせないものを海に頼っています」。この言葉を通じて、子どもたちは海と山との意外な結びつきを学びました。
館内には、ウミガメの糞(ふん)に含まれていたプラスチックなど、海洋汚染の実態を示す展示もありました。これらを目にした子どもたちからは、「ものすごくかわいそうで、もう、ごみゼロをめざそうと思いました」「どの川にもやっぱ捨てちゃダメだね、ごみは」といった声が聞かれ、海洋生物の苦境に心を痛めている様子が伺えました。
平賀館長の解説によると、伊勢湾には年間およそ1万2000トンものごみが流れ込むといいます。特に深刻なのが、港から2.5㎞ほど離れた答志島西側の海岸です。答志島には伊勢湾に流入するごみの4分の1、およそ3000トンが漂着するそうです。
この驚くべき数字を聞いた子どもたちは、自分たちの住む長野県と海洋ごみ問題とのつながりを意識し始めました。天竜川を通して海につながる岡谷市で環境の大切さについて学んでいる彼らにとって、この経験は海のごみ問題への関心をさらに深めるきっかけとなりました。
博物館での学習を終えた子どもたちは、いよいよ答志島へ向かいます。海と陸地の境界線に立つ彼らは、まさに環境問題の最前線に立っているのです。平賀館長の「身の回りのごみを減らすことが、海のごみを少しでも減らすことにつながるんだと感じてもらえれば」という言葉が、子どもたちの心に響いているようでした。
海のない地域に住む私たちにも、海洋環境を守るために出来ることがあります。海と山、上流と下流、すべてがつながっているという認識が、持続可能な未来への第一歩となるのかもしれません。
さて、答志島に到着した子どもたちを待ち受けているのは、どのような光景なのでしょうか。彼らの活動の続きは、次回の後篇でお伝えします。