海の未来を担う10代の研究者たちが、自らの研究成果を発表する晴れの舞台が開かれました。2025年2月15日、東京で行われた「マリンチャレンジプログラム2024 全国大会」。全国から選ばれた15名の若き研究者たちが、海洋・水環境に関する独創的な研究を披露し、会場は熱気に包まれました。日本財団が推進する「海と日本プロジェクト」の一環として開催されたこの大会で、驚きの研究テーマと若者たちの情熱あふれる挑戦が繰り広げられました。
全94テーマの中から最優秀賞に選ばれたのは、早稲田大学高等学院の鈴木雅人さん。「沖縄産サンゴにおける刺胞毒の調査とパリトキシンの謎」という、一風変わったテーマで審査員の心を掴みました。
鈴木さんは沖縄の海への愛着からサンゴに興味を持ち、研究をスタート。特に注目したのは、飼育界で人気のマメスナギンチャクです。「強力な毒パリトキシンを持っているのではないか」という仮説を立て、自ら実験手法を考案。その結果、マメスナギンチャクは複数の毒を持つという考察に至りました。
審査員長は「サンゴの毒という着眼点と、大学を巻き込んで研究を進めて成果を出したところに熱意を感じた」と高く評価。鈴木さんの研究は、海洋生物の神秘に迫る新たな一歩となりました。
日本財団賞を受賞したのは、山口県立徳山高等学校の松永七海さん。「イカから出る廃棄物の再利用法~イカでイカを釣る~」というテーマで、環境問題と漁業を結びつけた斬新な研究を発表しました。
イカの加工時に出る廃棄物を有効活用し、新たな釣り餌として開発する試み。この研究は、水産業の持続可能性を高めるだけでなく、海洋環境の保護にも貢献する可能性を秘めています。松永さんの発想は、海の恵みを無駄なく活用する新しい方法を示唆しており、審査員からも高い評価を得ました。
大会では、個人研究の発表だけでなく、「日本の海洋プランクトンマップを作ろう!」をテーマにした共同研究プロジェクトの成果発表も行われました。10チームが参加し、1分30秒のピッチ発表とポスター交流会で、互いの研究について熱心に質問し合う姿が印象的でした。
「生命の始まりも海です。ここにいる人は仲間なので、今後も楽しく研究を続けてください」。閉会式での審査員長の言葉に、参加者たちは大きくうなずきました。海への愛と科学への情熱を胸に、彼らの挑戦は続きます。
マリンチャレンジプログラムは、海洋分野での課題を見つけ、人と海との未来を創り出す仲間づくりを目指す画期的な取り組みで、日本財団「海と日本プロジェクト」の一環として実施されています。
このプログラムでは、海・水産分野・水環境に関わるあらゆる研究に挑戦する10代の次世代研究者を対象に、研究資金の助成や研究コーチによるメンタリングサポート、成果発表の機会を提供しています。2017年の開始以来、359テーマ、のべ1300名以上の次世代研究者が参加し、海洋研究の裾野を広げています。
「海と日本プロジェクト」は、海で進行している環境の悪化などの現状を、子どもたちをはじめ全国の人が「自分ごと」としてとらえ、海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げていくことを目的としています。マリンチャレンジプログラムは、この理念を若い研究者の育成という形で具現化し、海洋立国日本の未来を支える重要な役割を果たしています。