海と日本プロジェクトin長野の小学生向け海洋学習プログラム「信州ブリ調査隊」の活動を締めくくる総合学習発表会です。長野県民がごちそうとして昔から愛して食してきた富山の寒ブリの漁獲量が近年不安定になっている状況や対策を学ぶ場として、こうした研究を担当している富山県農林水産総合技術センター水産研究所海洋資源課の阿部隼也さんを講師に招いての講義です。
講義テーマは「今、海で起きている変化~富山湾のブリを守るために~」
まず最初はブリの生態のおさらいから。ブリは、日本全国の都道府県沿岸に分布していて、大きいものでは1メートルを超え、温かい海水エリアを好む魚です。寒ブリの産地である富山県の漁獲量は、1997年に1031トンでピークとなった一方で、2000年ごろからは各年の漁獲量が不安定になっている。2021年の漁獲量は141トンであることが示されました。こうした状況を調べるため富山県では電子タグを使った標識放流調査を実施。その結果、ブリは冷たい水(14℃以下)を避けて南下していることがわかりました。日本近海では、2021年までのおよそ100年間で海面水温が1.19℃上昇していることから、以前は沿岸近くの温かい海を通っていたブリが沖を泳ぐようになりました。そのために沿岸の定置網にブリがかからなくなったのが、漁獲量の不安定につながっていると解説。地球温暖化による海水温の上昇の影響が出ていたことを知りました。そして、阿部さんから調査隊メンバーに対して「豊かな海を守るためにできることは何?」と投げかけがありました。班ごとに分かれ、これまで学んだことをふまえて意見を出し合います。「海水温をこれ以上あげないために、省エネにこころがける」「海にごみを出さないようにする」「海を大事にするために長野県の森と川の環境をよくする」「漁師さんが困らないよう魚をたくさん食べる」「将来、漁師になって魚に関する仕事につく」「今回学んだことを家族や友達などたくさんの人に知ってもらい、海を守ることに協力してもらう」「海水浴にいって海の楽しさを伝えて、海のファンを増やす」といった意見が次々とでました。信州ブリ調査隊のメンバーは海が抱える問題を自分事化してとらえることができるようになったようです。