レポート
2024.07.16

みそ汁の具材 あおさが陸で育つ!長野市のみそ製造会社 世界初の挑戦

みそ汁の具材として人気の高いあおさ。その安定供給と持続可能な生産を目指す画期的なプロジェクトが始動しています。長野市のみそ製造販売企業が取り組む世界初の試み、それはみそ汁の具材用あおさの陸上養殖です。

あおさ陸上養殖への挑戦

マルコメ株式会社(本社・長野市)は、愛媛県西予市に開設した養殖試験設備で、徳島文理大学の協力のもと、あおさ(ヒトエグサ)の陸上養殖を開始しました。

「あおさの供給不安を解消するとともに、海洋資源の持続的な活用を目指して、陸上養殖による藻場の創出に着目しました」と、同社は説明しています。背景には、温暖化による海水温の上昇などで、海藻類全般の収穫量が減少し続けているという課題がありました。

気候変動に左右されない生産体制を目指す

陸上養殖試験設備は、約3,000坪の広大な敷地を誇り、大小あわせて48基の水槽が並びます。2019年から試験養殖を始めたこのプロジェクトは、現在、3名体制で収穫量の増産や通年養殖に向け、取り組みが行われていて、今年、種苗作成から収穫まで一連の流れを確立しました。通年養殖では夏季の収穫量が不安定になり、この課題を解決するために種の掛け合わせを試みながら、より環境に適した種苗の作出に取り組んでいます。

技術革新がもたらす可能性

この画期的なプロジェクトを支えているのが、徳島文理大学薬学部生薬研究所の山本博文教授が開発した技術です。山本教授は「『あおさのり』の生育過程で必要な成長促進因子サルーシンを人工合成することに成功し、世界初の『あおさのり』陸上養殖が実現しました」と説明します。さらに、高温耐性株の発見により、通常20度以上の海水温では生育できないあおさの通年生産が可能になりました。これにより、海面養殖と比べて単位面積あたりの収量が多く、生産期間も短いという陸上養殖のメリットが最大限に活かされることになります。

未来を見据えた持続可能な生産

マルコメは、2024年9月から、即席みそ汁商品の「生みそ汁 料亭の味 あおさ 8食」の一部に陸上養殖あおさを使用する予定です。そして、2027年度までに年間収穫量14トンを目指しています。

この取り組みは、あおさの安定供給だけでなく、環境問題解決への貢献も期待されています。「陸上養殖によってブルーカーボンとしてCO2の削減に期待がもてます」と、同社は将来展望を語ります。

さらに、山本教授は海洋酸性化問題にも言及し、「海に溶け込んだ二酸化炭素を吸収する働きをもつ海藻を研究することで、このような課題解決にも貢献できる」と、あおさ研究の可能性を示唆しています。

海の恵みと技術の融合が拓く、持続可能な未来

マルコメ株式会社のあおさ陸上養殖プロジェクトは、みそ汁の具材の安定供給を実現するだけでなく、海洋環境の保全やCO2削減にも貢献する可能性を秘めています。みそ汁を飲むたびに、その一杯に込められた技術と希望を感じる日が、すぐそこまで来ているのかもしれません。

記事参考リンク PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000135535.html

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