海と日本プロジェクト in 長野「信州 塩をめぐる冒険」海につながる新聞発表会。
続いて、上越科学館の佐藤直樹副館長による特別セミナー「山川海のつながり」。これまで来場者に向かって座っていた子どもたちも、席を移動して、一番前で佐藤副館長の話を聞きます。
佐藤副館長は、みんなが勉強してきた「マイクロプラスチック」のことにも触れながら「一見きれいに見える浜辺にも、マイクロプラスチックよりも大きなゴミがたくさん流れ着いています」と写真を紹介します。
子どもたちはこれまでの活動で、マイクロプラスチックを魚たちが食べ、最終的に人間の体に入り、危ないということを学んできました。でも「浜では釣り糸が足に絡まり、振りながら飛んでいく鳥を見ることがあり、クラゲなどを食べるウミガメは、ビニールゴミを餌と間違えて食べてしまう。大きなゴミも、やっぱり危ないのです。ゴミが散らかった砂浜。いい砂浜だと思いますか?」という佐藤副館長の問いかけに、首を横に振る子供たち。人間の何気ない行動が、自然界に大きなダメージを与えることになるのだと、改めて教わります。
さて、話は海から森・山へと移ります。
「日本は豊かな森林に覆われています。写真は上越市のブナ林。腐葉土がフカフカとして地面がやわらかい森には、たくさんの菌がいて、ブナに栄養を送っています。きれいなので、こういう場所でコンサートをやることがありますが、多くの人が入ると踏み固められて地面が固くなってしまい、菌が動けなくなり、ブナ林自体が衰退していってしまいます。森は、いろんな生き物に支えられているのです」
「豊かな森にはたくさんの栄養があります。腐葉土から鉄分などの栄養が流れ出て、川や土の状態が良くなり、その栄養が海に流れ、多くの魚や海の生き物の栄養になります。でも、森が弱ってしまうと、いい栄養が流れ出ないのです」
「海で育ち、川へ戻ってくる鮭は、熊やキツネの食べ物になります。熊は川で食べるだけでなく、鮭をくわえたまま、自分のねぐらまで戻ってきます。そうして森に入った鮭の死骸は分解されて、森に海由来の窒素などの栄養が入ります。すると、森はさらに豊かになる。豊かになった森から川へと栄養が流れ、さらに海へと流れ、魚たちの栄養になるのです」
思いもよらないところで、そんな循環が起きているとは…!
子どもたちだけでなく、大人からも驚きの声が上がります。
「研究によると、鮭が昇ってくる川と昇らない川では、森の樹木の成長率が二倍も違い、鮭がたくさん川に戻っていた1800年代は木の成長率が高いが、1900年代は下がっている。そして2000年代は、もっと下がっている。これは、何を意味しているのでしょうか」と問いかけます。
みんなが考えていたその時、佐藤副館長が「みなさんは、海の塩を作ったということを聞きました。私は、海水からできた塩で、新巻き鮭を作ってきました」と発表。なんと、手作りの「新巻き鮭」の登場です!!
恐る恐る触ってみる子どもたち。
ちょっと苦手そうな表情ながら、「すごい匂い」「スルメみたいな匂いがする」「固い…」など、感想を伝えてくれます。横にいた大人たちからは「おいしそうな匂い」という声が漏れ聞こえていました。
「鮭は卵から子供時代を経て、海で育って川へ遡上し、死骸は分解されて森の栄養になり、稚魚が育つための栄養を川にもたらす。鮭は自然界の宅配便のようですね。豊かな川は豊かな森や山のおかげ。豊かな山のおかげで、さらに海も豊かになる。こんな風に山、川、海は循環しているのです」
「でも今は、川から流れてくるゴミや、マイクロプラスチックなどいろんな問題が起きていて、過去に戻って、壊れた環境をもとに戻すことは不可能。山、川、海を守るために、今から私たちにできることは何でしょう?」と問いかけます。
「例えば、ごみを捨てない。植樹運動、緑の羽根募金、身近なところで川をきれいに保つ、川の周りのゴミを拾うなどさまざまな方法があります。ただ、ある特定の場所だけを守るのではなく、広い視野を持って、いろんな地域、生き物の環境を守ることや、生き物に対する思いやりを持つことが大切」
「皆さんの活動を今後も続けると、豊かな海の幸を守ることにつながり、その環境を、皆さんの子供や孫の世代にバトンタッチをすることになる。次の世代にいい環境をつなげていく活動をして、あなたの優しさで、山川海の輝きを取り戻してください」と締めくくりました。