レポート
2017.12.30

信濃の冠を持つ魚『シナノユキマス』

日本には越前ガニや松坂牛、名古屋コーチンなど、地域の名がついている生き物が数多くいますが、ここ長野県にも信濃の名を冠した魚がいます。

その魚の名は『シナノユキマス』。

古来より長野県に生息する在来種ではなく、昭和後期に定着の可能性、社会的有用性、自然界の生態系に及ぼす影響、魚病の侵入防止などいくつかの検討項目をクリアしてチェコスロバキアから養殖を目的に持ち込まれた魚で、学名では[コレゴヌス]と呼ばれる魚です。

 では、なぜその魚にシナノユキマスという名がついたのでしょうか。

長野県の風土がシナノユキマスを普及させた

昭和初期から長野県以外の自治体で、この魚の増殖や養殖が試みられていましたが、なかなか安定した成果を得られた自治体はありませんでした。

しかし1975年、長野県水産試験場佐久支場が高冷地における鯉に代わりうる養殖魚種の開発を目的に当時のチェコスロバキアから20万粒を導入したことを皮切りに、以降1980年までに7回・合計220万粒の卵を導入し、世界で初めて事業規模での完全養殖技術の開発に成功しました。本来ロシアや北欧に分布しているこの魚にとって、長野の風土や千曲川の水温が、養殖と産卵に大変適していたのです。

養殖が始まった当初はロシア語名で「ペリヤジ」と呼ばれていましたが、1983年に長野県の特産魚としてふさわしい愛称を付けようと、雪のように美しい銀白色の姿から長野県で生産されたこの魚に「シナノユキマス(信濃雪鱒)」という名前が付けられました。

同種を白鱒やヒメノウオと呼ぶ県もあるようですが、実はいずれも長野県産シナノユキマスの稚魚や発眼卵を飼育試験用として分譲したものが元になっているのだそう。

シナノユキマスを楽しむ

1987年には漁業権が設定され、県内5湖沼(立岩湖、柳久保池、青木湖、松原湖、白樺湖)で放流が始まり、増殖放流種苗として利用されるようになりました。現在では立岩湖、柳久保池、青木湖でワカサギやヒメマスとともに釣魚として親しまれています。冬の寒さが本格的になるこれからのシーズン、立岩湖や加和志湖ではシナノユキマスの穴釣りも行われています。

また、食材としての肉質は白身で淡泊な味が特徴で、淡水魚特有の生臭さがありません。適度に脂がのり、小骨も少ないことから刺身や唐揚げ、洋風のフライにも利用しやすい魚です。特に、刺身は適度な脂ののりと甘味に加え歯ごたえも良好で、おすすめの食べ方なのだとか。

佐久地域にはシナノユキマスを使った料理を出している飲食店も多いようなので、出掛けた先で見つけた際は、ぜひ一度お試しください。

イベント詳細

イベント名信濃の冠を持つ魚『シナノユキマス』
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