山国・信州でこれまで例のなかった取り組みが始まりました。それは海のない県の高校生たちが海洋政策の立案に挑戦する「長野県高校生海の政策コンテスト」。「本番」に向けて、3人1組の高校生チームを支えるのは頼もしい大学生メンターです。
2025年3月に行われたスタートアップ合宿。3チームを支える大学生3人も参加しました。すでに海や地域の課題解決に取り組んでいて頼もしい存在。高校生たちと年齢が近い彼らは、どんな思い後輩たちをサポートしているのでしょうか。
「環境活動は楽しくなければ続きません」。立命館アジア太平洋大学を経てオンラインの大学生となった北村優斗さん。長野の高校時代にごみ拾に目覚め、やがて海洋ごみ問題に取り組むようになりました。その経験を生かし、大学では「清走中」という画期的なイベント・プロジェクトを立ち上げました。
北村優斗さん
ごみ拾いをゲーム感覚で楽しむこのイベントは、大手のメーカーやコンビニチェーンとも連携、年商2000万円規模にまで成長。「清走中」が生む5つの社会インパクトは、①楽しい環境教育の機会の提供、②幅広い属性の参加者動員、③地域消費を促す景品設計、④観光促進、⑤自治体の清掃費用削減。
「3月からは石川県珠洲市に移住し、会社設立を準備中です」。次は地震で人口減少・高齢化が一気に進んだ能登の活性化に挑む方針。被災地で始める北村さんの新たな挑戦は高校生たちの良きロールモデルとなっています。
能登地震を機に、地元の海の大切さを改めて実感しました」。東京海洋大学の杉林拓望さんは金沢市出身。大学の学園祭では能登の水産加工品を販売する復興支援イベントを企画し、輪島朝市の一夜干しや地元鮮魚店の商品をPRしました。その情熱は次のステップへ。
杉林拓望さん(右奥)
「4月からは休学して、能登町の地域おこし協力隊として活動します」。杉林さんは体験型観光ツアーの開発して、観光と教育を結びつけた地域活性化に取り組む予定です。
「能登の人たちと一緒に体験プログラムを作り、能登の美しさを伝えていきたい。震災後の『能登に行けない』というイメージを払拭したいんです」。
東京海洋大学2年の若松綾さんは埼玉県の出身。「海が好き、子どもが好き、そして深く考えることが好き」。そんな思いから新潟の高校に進み、海洋教育の道を志してきました。八王子での魚さばき体験イベントの開催やカリブ海でのJICAボランティア活動など、すでに教育実践を重ねています。
若松綾さん
高校生たちは9月に行われる「プレゼン大会」に向けて、テーマを決め、調査・研究に入ります。メンターの3人はチームを受け持ち、より良いプレゼン内容になるよう、知識と経験を生かして助言などをします。
「積極的にやってみる、早めに行動する、そして試行錯誤を恐れないでください」(若松さん)
「失敗を恐れずに、自分の興味のあることに挑戦してほしい」(杉林さん)
「皆さんの新しい発想で、海の未来を変えていってください」(北村さん)
「私たちも具体的な一歩を踏み出せそうな気がします」などと話す高校生。実際に行動を起こし、成果を上げている先輩たちの存在は大きな励みになっています。
次回は、早朝から行われた漁業体験の様子をお伝えします。