”魚をさばく”という日本古来の調理技法を次の世代へつなげるとともに、豊かで健全な海を未来へ引き継ぐアクションの輪を広げようと「日本さばける塾 in 長野」が11月25日に長野市の清泉女学院大学調理室で開催され県内から8組19名の親子が参加しました。日本さばける塾は、魚をさばいて調理する料理イベントではありません。今、海で起きている変化を学ぶ体験型の学習会です。今回は、長野県最大の水産物卸売会社のマルイチ産商さんと連携しての開催です。
天然魚が減少する中、増える養殖魚 ~海なし県長野に鮮魚が届くまで~
海の学びの講師は、マルイチ産商の深谷薫さんと堀江早貴さん。最初に日本でとれる天然魚の量は、最もとれた時期と比べ、今は3分の1程度に減っていると説明。その理由は海水温の上昇や魚の取り過ぎ、海の変化によりとれる魚が変わったこと、クジラによる食害等が原因ではないかと考えられています。こうした中、安定的に安全においしい魚を届けるため、人間が育てた養殖魚はこの40年間で14倍になっているという背景があります。
マルイチ産商は海がない長野県の会社ですが、大分県の海でかぼすをエサにつかったオリジナル品種かぼすブリを開発し、長野県を含めた全国に出荷しています。全国には2785もの漁港があり、卸売り会社がそれをスーパーやレストランなどに運ぶ役割をしている流通網があるからこそ、鮮魚が全国津々浦々に届くことも教えてもらいました。
マルイチ産商の深谷さんは、「山の環境が保たれていると川を通じて豊かな栄養が海につながっているので、海の環境と長野県は、とても関係が深い。だから、おいしい魚を食べるとき、個のつながりを思いだしてほしい。」と参加者に伝えました。この後、1本5kgのかぼすブリの解体をデモンストレーション。「大きくても、みなさんがさばくアジとやり方は同じですよ。」と伝え手際よく三枚おろしを披露すると参加者からは拍手が沸き起こりました。普段食べている刺身の切り身が本物の魚からとれるものという当たり前のことを直接見たことで、こどもたちは感動。あらためて命のありがたみを感じた様子でした。
初めてのアジのさばきに挑戦
参加児童の多くが魚をさばくのが初めての経験でしたが、指導を務めたクッキングコーディネーターの浜このみ先生が三枚おろしのコツについて、「骨のギリギリの部分に包丁を入れて、”骨に当たる音”が聞こえるくらいが正解」と伝え、まずはやり方を披露しました。
その後、さっそく児童たちがアジのさばきに挑戦。「身がぷよぷよしてる。」「結構骨があって、固いんだな。」など魚の身に興味深々。
三枚おろしに「意外と簡単だったので、家でもやってみたい。」との声も。
アジは、小麦粉を付けて、多めの油で揚げ焼きに。最後にチーズとカレー粉でまぶしたパン粉をかけてさっそく一品出来上がり。二品目はかぼすブリの漬け丼。マルイチ産商の深谷さんにさばいてもらったかぼすブリを醤油とすりごまを混ぜて出来上がり。
その後、参加者全員でいただきました。「自分でさばいたから、特に美味しい。」「お店で出せる味。」と上々の出来に大満足な様子。イベントの最後には浜このみ先生からさばけるマスターの証しとしてカードがひとりずつ手渡されました。
参加した子ども・保護者からの声
⼩学5年⽣男子「天然魚が減ったいることを初めて知った。海には沢山の変化が起きていて心配になった。海を守るために、ごみ拾いを積極的にして海を守りたい」
⼩学6年⽣男⼦「魚をさばくのは初めてだったけど、教わると一人でもできるのがわかったので、家でも絶対やりたい。家族に自分がさばいた魚を食べてほしい。」
⼩学3年⽣⼥⼦保護者「単なる料理イベントではなく、魚や海の環境についても学べる他にはないイベントで子供たちにとって貴重な場となった。私自身も知らないことが多くためになった」
⼩学5年⽣男⼦保護者「魚を触ることすらできないと思っていた子供が進んでさばく様子を見て成長を実感できた。自宅ではさばきを敬遠していたが、家庭内でのさばける塾を実施したいと思いました。」
このイベントは、次世代へ豊かで美しい海を引き継ぐために、海を介して人と人とがつながる“日本財団「海と日本プロジェクト」”の一環として実施しました。
・主催 一般社団法人 海と日本プロジェクトin長野、一般社団法人 海のごちそう推進機構
・共催 ⽇本財団 海と⽇本プロジェクト
・協力団体 マルイチ産商・kono-kono Kitchen studio・清泉女学院大学